InstagramInstagram

妊娠中に甲状腺がんと言われましたがどうしたらいいですか【医師執筆】

妊娠中に甲状腺がんと言われましたがどうしたらいいですか【医師執筆】

ミネルバクリニックでNIPTを受けた患者さんからの質問
妊娠中に甲状腺がんだと診断されました。先生はがんの専門医も持っているので、どうしたらいいのか教えてください。

患者さん個人に返答するにもお返事の内容がボリュームありますので、HPに記載するとお約束しましたのでこちらに記載します。

妊娠中に甲状腺結節が見つかった場合

甲状腺結節が見つかった妊婦は、妊娠していない場合と同じように評価すべきです。TSHと超音波検査が行われます。

但し、甲状腺の放射性核種スキャンは妊娠中は禁忌となります。

結節の細針吸引(FNA)生検の適応は、非妊娠患者と同じです。

結節の細針吸引(FNA)生検の適応

FNAは、固形で低エコーの結節で、1.5cm以上(最大寸法で判断)の場合に行うべきとされています。
また、FNAは、1~1.5cm以上の固形で低エコーの結節で、以下のいずれかの疑わしい超音波所見がある場合に実施すべきであるとされています。

  • ・不規則な辺縁(1.5cm以上)
  • ・微小石灰化(1cm以上)
  • ・幅より高めの形状(1cm以上)
  • ・大石灰化(1.5cm以上)
  • ・周辺(縁)石灰化(1.5cm以上)
  • ・任意の組み合わせ(1cm以上)

1つ以上、疑わしい超音波所見があると、悪性腫瘍の推定リスクは35~90%となり、追加所見のない低エコー固形結節の9~20%よりも高くなります。

FNA自体はは妊娠中に行っても安全ですが、観察期間中に結節の増大、気になる超音波の特徴(例えば、甲状腺を越えた進展、気管や反回喉頭神経に隣接した進展)、頸部リンパ節の進展などの証拠がない場合は、多くの内分泌科医は出産後までFNAを延期するでしょう。

妊娠中に手術が必要な場合、最適な時期は妊娠第2期(中期)となります。

したがって、結節の成長を評価するための経過観察の超音波検査のタイミングは、結節が妊娠初期に初めて指摘された場合は、妊娠中期とすべきでしょう。

結節が妊娠後期に初めて指摘された場合は、経過観察の超音波検査は産後に延期されることが可能です。

FNAを実施した場合、その後の管理は生検の結果によって異なってきます。

まれに、良性結節が急速に成長することがあり、気道圧迫症状発現すると、妊娠中期に手術が必要となることがあります。

FNAで判定不能な細胞診(濾胞性新生物、意義不明の異型、または意義不明の濾胞性病変)が示された場合、分子検査を妊娠中に行うか、または、悪性腫瘍の発生率は6~52%と報告されているものの、これらの結節のほとんどが良性であるため、患者の経過を観察し、さらなる評価(分子検査、適応があれば甲状腺スキャン、手術)を出産後まで延期することが多い。まれに、急速に成長したり、転移を疑わせるリンパ節腫脹が出現したりすると、妊娠第2期に手術が適応となることがあります。

妊娠中に甲状腺がんが見つかった場合

ほとんどの観察研究では、妊娠中に発見された甲状腺がんが予後に有意な影響を与えることはありません。カリフォルニア州のがん登録で分娩前の甲状腺がん129例と分娩後の甲状腺がん466例が確認され、妊娠と関係のない甲状腺がんの女性と比較して全予後に差はないことがわかりました。

手術のタイミング

分化型甲状腺がんの女性は手術が必要である。しかし、甲状腺が一般的に緩徐に進行をするという性質を考えると、母体や胎児の合併症を最小限にするために、甲状腺摘出術は通常出産後まで延期される。この方法は予後に悪い影響を与えないようで、61人の甲状腺癌の妊婦のレトロスペクティブ研究の結果が示しているように、そのうちの77%は出産後まで手術を遅らせ、20年後の転帰(再発や遠隔転移)については、妊娠第2期に手術を受けた女性や妊娠していない女性と比較して差はなかった。

妊娠中の手術が適応となるのは、がんが大きく、侵攻性が高く、急速に増殖するまれな患者や、広範なリンパ節転移や遠隔転移がある場合である。妊娠中の手術で最も安全な時期は、妊娠第2期である

甲状腺または副甲状腺の手術を受けた201人の妊婦(92人が甲状腺癌のために甲状腺切除術を受けた)を対象としたあるレトロスペクティブ研究では、妊婦は非妊婦に比べて手術合併症(11対4%)と母親の副甲状腺機能低下症、低カルシウム血症、反回喉頭神経損傷という内分泌特異的合併症(16対8%)の割合が有意に高かった

手術を受けない女性のモニタリング

生検で証明された甲状腺がんの手術を延期する場合、妊娠中は各妊娠期に甲状腺超音波検査を行い、患者をモニタリングすべきである。生検で証明された甲状腺乳頭癌の女性19人を妊娠中に超音波でモニターした研究では、癌の大きさに臨床的に有意な増加はなく、頸部結節転移を起こした患者もいなかった。

24週までに甲状腺癌の大きさが有意に増大した場合(二次元的に50%、または直径で20%)、妊娠後期に手術を考慮することがある。転移の発生は外科的介入の明らかな適応である。しかし、病変が安定しているか、大きさの増加が少ない場合、または癌が妊娠後期に診断された場合は、出産後に手術を行うことができる。甲状腺手術が延期されるそのようなケースでは、TSHを0.3~2.0mU/Lの範囲に維持することを目標に甲状腺ホルモン抑制療法を行うことを勧める。

以前に治療を受けたことがある妊婦の場合

甲状腺癌に対して放射性ヨード治療を受けたことがある女性では、甲状腺ホルモンレベルが正常化し、追加の放射線治療が必要ないことを確認するために、少なくとも6ヶ月は妊娠を延期すべきとされています。

超音波検査や生化学的(サイログロブリン)に持続性病変の証拠がない女性では、妊娠自体が再発のリスクを高めることは示されていません。持続性疾患(構造的または生化学的)を有する女性では、妊娠中に疾患の進行が起こる可能性があります 。

しかし、肺転移に対する手術および放射性ヨード治療後に妊娠した女性37人と妊娠しなかった女性87人を比較した研究では、5年および10年の無増悪生存率はそれぞれ、妊娠群で94.5%および63.2%、非妊娠群で89.8%および58.1%と同程度であった

サイログロブリン値が持続的に上昇している女性、または妊娠前に超音波検査で持続性疾患が認められた女性では、定期的な超音波検査とサイログロブリン(各妊娠期に1回)のモニタリングが推奨されています。

疾患が持続している女性では、甲状腺ホルモン抑制療法を続けるべきであり、妊娠前のTSH目標値はそのまま続けてください。同じ程度のTSH抑制を維持するためには、ほとんどの女性はレボチロキシンの増量が必要になるでしょう。したがって、妊娠が確認されたらすぐにTSHを測定し、妊娠16~20週までは4週間ごとに測定し、その後妊娠26~32週の間に少なくとも1回測定すべきでしょう。TSHを望ましい範囲に維持するために、レボチロキシン(T4)の投与量を増やすべきです。

まとめ

基本的には甲状腺がんは出産後に手術となります。

ミネルバクリニックでは、院長が遺伝子とがんと内科の専門医を持っていて、幅広い知識のなかから、みなさまに真摯にお答えしております。

こうした質問へのおこたえは、NIPTの患者さんには無料で行っております。本来は、セカンドオピニオンの料金を頂いて提供すべきなのだと思いますが。当院でNIPTその他の遺伝子検査をお受けいただいた方々には、惜しみなくセカンドオピニオンを無料で提供しています。

困っている人を助けたい。それが医療の基本だと思っているので。

ミネルバクリニック院長 仲田洋美 拝

院長アイコン

ミネルバクリニックでは、以下のNIPT検査(新型出生前診断)を提供しています。少子化の時代、より健康なお子さんを持ちたいという思いが高まるのは当然のことと考えています。そのため、当院では世界の先進的特許技術に支えられた高精度な検査を提供してくれる検査会社を遺伝専門医の目で選りすぐりご提供しています。オンライン診療+地元で採血にて全国からミネルバクリニックにお越しになることなく受けられます。

関連記事:
NIPTトップページ
第三世代スーパーNIPT:組織によりDNAメチル化パターンが違うことを利用して正確性を高める世界特許|基本検査/4種類の微小欠失症候群/100種遺伝子の重い劣性遺伝病
第2世代マルチNIPTカリオセブン:すべての染色体のあらゆる部位を700万塩基のサイズで欠失・重複をチェック/9種類の微小欠失
第2世代マルチNIPTデノボ:精子の突然変異による重篤な遺伝病44疾患|合計リスクは1/600とダウン症同等に多く、妊娠後期にならないと判らない、ダウン症よりはるかに重篤
ペアレントコンプリート|母方由来の染色体異数性と父方由来のデノボをセットにしたペアレントの検査
コンプリートNIPT|第2世代マルチNIPTと第3世代スーパーNIPTジーンプラスをセットにした検査|デノボをセットにしたデノボプラスもございます


 

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

お電話での受付可能
診療時間
午前 10:00~14:00
(最終受付13:30)
午後 16:00~20:00
(最終受付19:30)
休診 火曜・水曜

休診日・不定休について

クレジットカードのご利用について

publicブログバナー
 
medicalブログバナー
 
NIPTトップページへ遷移