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アルポート症候群遺伝子パネル検査|6遺伝子包括解析(CD151・COL4A3・COL4A4・COL4A5・COL4A6・MYH9)

アルポート症候群遺伝子パネル検査|6遺伝子包括解析(CD151・COL4A3・COL4A4・COL4A5・COL4A6・MYH9) | ミネルバクリニック

アルポート症候群遺伝子パネル検査|6遺伝子包括解析(CD151・COL4A3・COL4A4・COL4A5・COL4A6・MYH9)

アルポート症候群とは

アルポート症候群(Alport syndrome;AS)とは、腎機能の進行性低下、感音性難聴、眼異常を特徴とする遺伝性疾患です。
この疾患は、腎臓、耳、眼の基底膜の構造に重要な役割を果たすIV型コラーゲンの異常によって引き起こされます。アルポート症候群は持続的血尿、タンパク尿、腎機能の徐々な低下を主な症状とし、最終的に末期腎不全に至ることがあります。

アルポート症候群は遺伝形式により3つのタイプに分類されます:X連鎖型(約85%)、常染色体劣性型(約10-15%)、常染色体優性型(約5-10%)です。X連鎖型では男性の方が女性より重篤な症状を示し、90%の男性が40歳までに末期腎不全に達します。この疾患は生涯にわたって管理が必要であり、早期診断と適切な治療により腎機能の保持期間を延長することが可能です。

アルポート症候群における遺伝子検査の重要性と役割

アルポート症候群における遺伝子検査は、正確な診断と治療方針の決定において極めて重要な役割を果たします。以下は、アルポート症候群における遺伝子検査の重要性と役割についての要点です。

●正確な診断の確立
遺伝子検査により、アルポート症候群の原因となる特定の遺伝子変異を同定し、確定診断を行うことができます。COL4A3、COL4A4、COL4A5遺伝子の変異パターンにより、遺伝形式を特定できます。
●治療戦略の個別化
遺伝子型に基づいて、疾患の進行予測や最適な治療開始時期を決定できます。特に、ACE阻害薬やARBによる早期治療介入の重要性が明らかになっています。
●家族への遺伝情報提供
遺伝子検査結果は、患者の家族に対して遺伝的リスクの評価や遺伝カウンセリングを提供する際に重要です。特に、腎移植ドナーの選択においても重要な判断材料となります。
●疾患の予後予測
特定の遺伝子変異タイプに基づいて、腎不全への進行速度や聴覚・眼症状の発現リスクを予測し、適切なモニタリング計画を立てることが可能です。
●研究への貢献
遺伝子検査データは、アルポート症候群の病態解明や新規治療法開発のための貴重な研究資源となります。

遺伝子検査は、アルポート症候群の診断精度向上と個別化医療の実現において不可欠なツールとなっており、患者とその家族の生活の質向上に大きく貢献します。

アルポート症候群の遺伝要因

アルポート症候群の遺伝要因は、IV型コラーゲンをコードする3つの遺伝子の変異によって引き起こされます。これらの遺伝子変異は、異なる遺伝形式と疾患の重症度に関連しています。

●X連鎖型アルポート症候群(XLAS)
COL4A5遺伝子の変異によって引き起こされ、全症例の約85%を占めます。この遺伝子はX染色体上に位置しており、男性では一つの変異で重篤な症状を示し、女性では症状が軽度から中等度となることが多いです。
●常染色体劣性型アルポート症候群(ARAS)
COL4A3またはCOL4A4遺伝子の両アレルに変異がある場合に発症します。両親がキャリアの場合、子供の25%が発症するリスクがあります。男女ともに重篤な症状を示します。
●常染色体優性型アルポート症候群(ADAS)
COL4A3またはCOL4A4遺伝子の片方のアレルの変異で発症し、軽度から中等度の症状を示すことが多いです。症状の進行は比較的緩やかで、末期腎不全に至るリスクは低めです。
●ダイジェニック遺伝
近年の研究により、複数のCOL4A遺伝子に変異がある場合の複合遺伝形式も報告されており、より複雑な病態を示すことがあります。
●遺伝子型と表現型の相関
変異の種類(ミスセンス、ナンセンス、フレームシフト、スプライス部位変異など)や位置により、疾患の重症度や進行速度が異なることが知られています

アルポート症候群の遺伝要因の理解は、個々の患者に対する適切な治療戦略の立案と家族の遺伝カウンセリングにおいて極めて重要です。

遺伝子に関連したアルポート症候群の症例

アルポート症候群は遺伝子変異のタイプと位置により、多様な臨床症状を示します。以下は、主要な遺伝子変異パターンと関連する症例をご紹介します。

●COL4A5遺伝子変異(X連鎖型)
最も一般的な形式で、男性患者では幼少期から血尿が始まり、10-20代で聴覚障害、20-30代で腎不全に進行することが典型的です。女性では症状が軽度で、血尿のみの場合も多いですが、一部では進行性腎疾患を示すことがあります。
●COL4A3/COL4A4遺伝子変異(常染色体劣性型)
両親がキャリアの場合に発症し、男女ともに重篤な症状を示します。幼少期から血尿とタンパク尿が出現し、10-20代で末期腎不全に達することが多いです。聴覚障害や眼症状も高頻度で認められます。
●COL4A3/COL4A4遺伝子変異(常染色体優性型)
一つの変異で発症し、症状は比較的軽度です。持続性血尿が主症状で、腎機能低下は緩徐に進行し、聴覚障害は稀です。一部の患者では無症状のまま経過することもあります。
●特殊な変異パターン
グリシン置換変異では、置換されるアミノ酸の種類により重症度が異なります。高度に不安定化をもたらすアミノ酸(アルギニン、バリン等)への置換では、より重篤な症状を示すことが報告されています

これらの症例から、遺伝子検査による正確な変異同定が、疾患の予後予測と適切な治療戦略の立案において極めて重要であることが明らかです。

遺伝子検査結果と家族の関係

アルポート症候群の遺伝子検査結果は、患者本人だけでなく、家族全体に重要な影響を与えます

  • ●遺伝子検査結果により、家族内での遺伝形式(X連鎖型、常染色体劣性型、優性型)が明確になり、他の家族メンバーのリスク評価が可能になります。
  • ●特にX連鎖型の場合、母親から息子への遺伝リスクは50%、娘への遺伝リスクも50%ですが、症状の重篤度は性別により異なることを理解する必要があります。
  • ●常染色体劣性型では、両親がキャリアの場合、次子の発症リスクは25%となり、家族計画における重要な情報となります。
  • ●遺伝子検査結果は、腎移植の際のドナー選択においても重要です。家族内ドナーの場合、遺伝的リスクを評価して適切な選択を行う必要があります。
  • ●早期診断により、症状が現れる前からの予防的治療(ACE阻害薬等)の開始が可能となり、疾患進行の遅延が期待できます。
  • ●遺伝カウンセリングを通じて、家族は疾患について正しく理解し、将来の医療的意思決定や生活設計を適切に行うことができるようになります。

アルポート症候群の遺伝子検査結果は複雑な情報を含むため、臨床遺伝専門医との連携により、家族がと適切にこの情報を活用できるよう支援することが重要です。

アルポート症候群遺伝子検査

アルポート症候群は、IV型コラーゲンをコードするCOL4A3、COL4A4、COL4A5遺伝子やその他関連遺伝子の変異によって引き起こされる遺伝性腎疾患です。腎機能の進行性低下に加えて、感音性難聴、眼異常(前円錐水晶体、網膜異常)を特徴とします。東京港区のミネルバクリニックでは、全国対応でオンライン診療による遺伝カウンセリングも提供しています。
「アルポート症候群遺伝子パネル検査」は、アルポート症候群に関係する6つの遺伝子(CD151、COL4A3、COL4A4、COL4A5、COL4A6、MYH9)を包括的に分析する検査です。この検査により、X連鎖型、常染色体劣性型、常染色体優性型のいずれの遺伝形式であるかを正確に診断でき、慢性腎疾患の原因特定に役立ちます。

アルポート症候群遺伝子検査を受けるべき人とは

持続性血尿、タンパク尿、
腎機能低下、聴覚障害
のいずれかがある人
ご家族にアルポート症候群
や原因不明の腎疾患、
聴覚障害がある人

どちらかに当てはまるすべての人が対象です

アルポート症候群遺伝子検査は、
持続性血尿、タンパク尿、腎機能低下、感音性難聴のいずれかを有する人、またはご家族にアルポート症候群や原因不明の腎疾患、聴覚障害の既往がある人が対象となります。
特に、若年での血尿出現、家族歴のある腎疾患、原因不明の感音性難聴がある場合は、この検査により原因が特定できる可能性があります。東京のミネルバクリニックでは全国からの患者様に対応しており、オンライン診療による遺伝カウンセリングも実施しています。

アルポート症候群は、患者さんそれぞれで遺伝形式や症状の進行速度が大きく異なります。そのため、治療計画は患者さんの遺伝子型に基づいて個別化される必要があります。「アルポート症候群遺伝子パネル検査」を行うことで、現在の疾患状態と将来の予後に関する重要な情報が明確になり、効果的な治療につながります

「アルポート症候群遺伝子パネル検査」によって、アルポート症候群の根底にある遺伝的原因を特定するメリットには以下のものがあります。

  • 確定診断により適切な治療開始時期を決定し、腎機能保護を最大化できる
  • 疾患の進行予測により、定期的なモニタリング計画を個別化できる
  • 家族内の遺伝リスクを評価し、早期発見・早期治療につなげられる
  • 腎移植時のドナー選択において重要な判断材料となる
  • 遺伝カウンセリングにより家族計画の適切な意思決定を支援できる

アルポート症候群遺伝子検査に含まれる遺伝子

詳しくはこちら
CD151, COL4A3, COL4A4, COL4A5, COL4A6, MYH9(6遺伝子)

CD151遺伝子:
11番染色体に位置し、テトラスパニンタンパク質をコードします。糸球体基底膜の構造と機能に重要な役割を果たし、変異により腎疾患を引き起こします。

COL4A3遺伝子:
2番染色体に位置し、IV型コラーゲンα3鎖をコードします。常染色体劣性型および常染色体優性型アルポート症候群の原因となります。

COL4A4遺伝子:
2番染色体に位置し、IV型コラーゲンα4鎖をコードします。COL4A3と隣接して配置されており、常染色体劣性型および常染色体優性型アルポート症候群の原因となります。

COL4A5遺伝子:
X染色体に位置し、IV型コラーゲンα5鎖をコードします。X連鎖型アルポート症候群の原因となり、全アルポート症候群の約85%を占めます

COL4A6遺伝子:
X染色体に位置し、IV型コラーゲンα6鎖をコードします。COL4A5と隣接して配置されており、一部のX連鎖型アルポート症候群の原因となります。

MYH9遺伝子:
22番染色体に位置し、非筋性ミオシン重鎖IIAをコードします。血小板機能と腎機能に関与し、MYH9関連疾患の原因となります。

これらの遺伝子は、腎臓の糸球体基底膜、内耳、眼の基底膜の構造や血小板機能に重要な役割を果たしており、いずれかの遺伝子に変異があると、アルポート症候群やその関連疾患の症状が現れます。

検体

血液、唾液、口腔粘膜ぬぐい液

※唾液・口腔粘膜ぬぐい液の場合は、遠方の方でもクリニックへお越しにならずに検査が可能です。(オンライン診療)
 その場合は、遠隔診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングをしたのち、検体を当院にお送りいただく流れとなります。

検査の限界

詳しくはこちら

この検査は次世代シーケンサー(NGS)技術を用いて、CD151、COL4A3、COL4A4、COL4A5、COL4A6、MYH9遺伝子のコード領域とスプライシング部位を解析します。しかし、以下の制限があります:

  • ・深いイントロン領域(エクソンから20bp以上離れた部位)の変異は検出されません
  • ・大規模な遺伝子再配列(転座、逆位など)は検出できません
  • ・体細胞モザイクや低頻度の変異は検出が困難な場合があります
  • ・COL4A5遺伝子の単一エクソンの欠失・重複の検出は限定的です
  • ・一部の複雑な構造変異は従来の方法では検出できない場合があります

確認が必要な変異については、Sanger法による確認を行います。大規模な欠失・重複が疑われる場合は、MLPA法やqPCR法による追加解析を実施します。

特記事項

遺伝子 特記事項
CD151 テトラスパニンタンパク質をコードし、糸球体基底膜の構造と機能に重要な役割を果たします。変異により腎疾患を引き起こします。
COL4A3 常染色体劣性型および優性型アルポート症候群の原因となります。ヘテロ接合体では薄い基底膜腎症(TBMN)として表現されることがあります。
COL4A4 COL4A3と同様に、常染色体劣性型および優性型アルポート症候群の原因となります。2番染色体上でCOL4A3と隣接して位置しています。
COL4A5 X連鎖型アルポート症候群の原因となり、男性でより重篤な症状を示します。女性では症状が軽度の場合もありますが、一部では進行性腎疾患を呈します。
COL4A6 X連鎖型アルポート症候群の一部の原因となります。COL4A5と隣接してX染色体上に位置し、同様の症状パターンを示します。
MYH9 非筋性ミオシン重鎖IIAをコードし、血小板機能と腎機能に関与します。MYH9関連疾患により腎症状と血小板異常を引き起こします。

検査が出るまでの期間

3~5週間

検査費用

275,000円(税込)

遺伝カウンセリング料金はおひとり様別途16,500円(税込)。検査を受けなくても遺伝カウンセリング料金は診察料ですのでお支払いください。

カバレッジ

カバレッジについての説明は別ページをご覧ください。
98% at 20x(リード回数20回で98%)

アルポート症候群の包括的な遺伝子解析により、正確な診断と個別化された治療戦略の立案が可能になります。早期診断により、ACE阻害薬等による腎保護療法の早期開始が実現し、長期的な腎機能保持に大きく貢献します。

よくある質問

アルポート症候群の検査はいつ受けるべきですか?
持続性血尿、家族歴がある腎疾患、原因不明の聴覚障害がある場合に検査をお勧めします。特に若年での血尿出現や腎機能低下がある場合は早期検査が重要です。
検査結果が陽性だった場合の治療法はありますか?
現在、根本的な治療法はありませんが、ACE阻害薬やARBによる早期治療により腎機能の保護と疾患進行の遅延が期待できます。遺伝子型に基づく個別化治療が可能です。
家族も検査を受ける必要がありますか?
遺伝性疾患のため、家族の検査をお勧めします。特にX連鎖型では母親から子への遺伝リスクが50%、常染色体劣性型では両親がキャリアの場合、次子の発症リスクが25%となります。
東京以外からでも検査を受けられますか?
はい、全国対応しております。オンライン診療により遠隔での遺伝カウンセリングが可能で、唾液・口腔粘膜ぬぐい液による検査なら来院不要です。
アルポート症候群と薄い基底膜腎症(TBMN)の違いは?
両者は同じ遺伝子変異が関与しますが、TBMNは軽症型で主に血尿のみを示します。遺伝子検査により正確な診断と将来リスクの評価が可能です。

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💡 臨床遺伝専門医監修

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。

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