InstagramInstagram

レット・アンジェルマン症候群NGSパネル遺伝子検査|ミネルバクリニック

レット・アンジェルマン症候群NGSパネル遺伝子検査|ミネルバクリニック

レット症候群とは

レット症候群(Rett syndrome)は、主に女児に発症する進行性の神経発達障害です。1966年にオーストリアの小児神経科医アンドレアス・レット博士によって初めて報告されました。本疾患は指定難病156号、小児慢性特定疾患に指定されており、出生女児10,000~20,000人に1人の頻度で発症します。

レット症候群の特徴は、生後6~18ヶ月頃までは正常な発達を示すものの、その後急速に発達が停滞し、獲得していた言語や運動能力が失われることです。特に手の常同運動(手をもむ、絞る、叩くなどの反復的な動作)が特徴的で、目的のある手の使用が困難になります。

レット症候群の約95%は、X染色体上に存在するMECP2(メチルCpG結合タンパク質2)遺伝子の変異によって引き起こされます。男性は1本しかないX染色体に変異があると重症となり、多くの場合出生前または乳児期早期に死亡するため、患者のほとんどは女性です。女性の場合、2本のX染色体のうち1本に変異があっても、もう1本の正常なX染色体により一部の細胞では正常なタンパク質が産生されるため、生存が可能となります。

アンジェルマン症候群とは

アンジェルマン症候群(Angelman syndrome)は、重度の発達遅滞、てんかん、失調性歩行(ぎこちない動き)、容易に引き起こされる笑いなどを特徴とする神経発達障害です。1965年にイギリスの小児科医ハリー・アンジェルマン博士によって報告されました。本疾患は指定難病201号、小児慢性特定疾患に指定されており、出生12,000~20,000人に1人の頻度で発症します。男女差はありません。

アンジェルマン症候群の患者さんは、特徴的な笑顔と温かい人柄を持ち、「よく笑う子ども」として知られています。重度の知的障害や言語障害がありますが、てんかんのコントロールなどが適切に行われていれば、健康的な生活を送ることが可能です。

アンジェルマン症候群は、15番染色体15q11.2-15q13領域に存在するUBE3A遺伝子の母親由来のコピーが機能しないことが原因で発症します。UBE3A遺伝子は「インプリンティング遺伝子」と呼ばれ、神経細胞では母親由来のコピーのみが働く特殊な遺伝子です。父親由来のUBE3A遺伝子はもともと働かないため、母親由来の遺伝子に異常があると、UBE3Aタンパク質がまったく産生されず、症状が現れます。同じ染色体領域の父親由来の遺伝子に異常があると、プラダー・ウィリー症候群という別の疾患になります。

症状と病態

レット症候群の症状

レット症候群の症状は、年齢依存性に段階的に進行します。以下の4つのステージに分けられます:

  • 第1期(発達停滞期):生後6~18ヶ月、数ヶ月間
    それまで正常だった発達が停滞します。頭囲の成長が遅れ始め、外界への興味が減少し、手遊びが減ります。この時期の症状は微妙で、見過ごされることがあります。
  • 第2期(退行期):1~4歳、数週間~数ヶ月間
    獲得していた言語や手の機能が急速に失われます。特徴的な手の常同運動(手をもむ、絞る、叩く、口に入れるなど)が出現します。自閉症様の症状(目を合わせない、社会的相互作用の減少)が目立つようになります。
  • 第3期(偽安定期または高原期):2~10歳、数年~数十年間
    退行が緩やかになり、症状が比較的安定します。てんかん発作が始まることが多いです。運動機能の問題(失調、筋緊張異常)が明らかになります。コミュニケーションや目線での交流がわずかに改善することがあります。
  • 第4期(後期運動悪化期):10歳以降
    歩行能力が低下し、車椅子が必要になることがあります。筋緊張異常、ジストニア、脊柱側弯症が進行します。てんかん発作の頻度は減少することがあります。言語機能はほとんど失われたままですが、目線でのコミュニケーションは保たれることがあります。

レット症候群の主要症状

  • 手の常同運動(手をもむ、絞る、叩く、口に入れるなど)
  • 獲得した言語能力の喪失
  • 獲得した目的のある手の使用の喪失
  • 歩行障害・失調性歩行
  • 頭囲発育不全(小頭症)
  • てんかん発作(約80%)
  • 睡眠障害
  • 呼吸異常(覚醒時の過呼吸や無呼吸)
  • 脊柱側弯症
  • 重度の知的障害
  • 自閉症様症状

アンジェルマン症候群の症状

アンジェルマン症候群には、以下の5つの主要臨床症状があります:

  • 1. 重度の発達遅滞
    言語の発達が特に遅れ、ほとんどの患者さんは言葉を話すことができないか、数語程度しか話せません。受容言語(理解する能力)は表出言語(話す能力)よりも良好です。
  • 2. てんかん発作
    約80%の患者さんに認められ、多くは幼少期(2~3歳)に始まります。発作の型は様々で、全般性強直間代発作、欠神発作、ミオクロニー発作などがあります。
  • 3. 失調性歩行・運動障害
    歩き方がぎこちなく、バランスを取るのが困難です。手足の動きがぎくしゃくし、振戦(震え)を伴うことがあります。多くの患者さんは歩行可能ですが、一部は歩行困難です。
  • 4. 容易に引き起こされる笑い・幸せそうな表情
    頻繁に笑い、幸福感の高い性格が特徴的です。手を叩いて笑ったり、興奮したりする様子がよく見られます。この特徴から、かつては「幸せな人形症候群」と呼ばれていましたが、現在この名称は使用されません。
  • 5. 特徴的な顔貌
    下顎突出、口が大きい、舌を突き出す癖などが認められます。

アンジェルマン症候群のその他の症状(80%以上の患者さんに認められる)

  • 小頭症(2歳頃までに頭囲の発育遅延が明らかになる)
  • 睡眠障害(眠りにくい、夜中に目が覚めやすい、睡眠時間が短い)
  • 弄舌癖(舌を突き出したり吸ったりする癖)
  • 過度の咀嚼行動
  • 水や光るものへの興味
  • 色素低下(髪や目の色が薄い傾向)
  • 手の細かい震え
  • 脊柱側弯症

進行と予後

レット症候群:症状は進行性ですが、適切な管理により多くの患者さんは成人期まで生存できます。平均寿命は約40歳以上とされていますが、個人差が大きいです。突然死のリスクがあり、心臓や自律神経系の異常が原因と考えられています。

アンジェルマン症候群:生命予後は比較的良好で、平均寿命は一般の方とほぼ同じです。誤嚥性肺炎や転倒による事故などのリスクに注意が必要ですが、適切な管理により健康的な生活を送ることが可能です。

遺伝形式と原因遺伝子

レット症候群の遺伝学

レット症候群は主にX連鎖優性(顕性)遺伝形式をとります。

  • MECP2遺伝子(主要原因遺伝子):
    典型的なレット症候群の約95%がこの遺伝子の変異によって引き起こされます。MECP2遺伝子はX染色体のXq28領域に存在し、メチルCpG結合タンパク質2をコードしています。このタンパク質は、DNAのメチル化部位に結合し、他の遺伝子の発現を調節する重要な役割を担っています。
  • CDKL5遺伝子:
    非典型的なレット症候群の一部(早期発症型で重度のてんかんを伴う)の原因となります。CDKL5遺伝子もX染色体上に存在します。
  • FOXG1遺伝子:
    先天性の小頭症や脳梁異常を伴う非典型的なレット症候群の原因となります。

遺伝パターン:レット症候群のMECP2変異の約95%以上は新規突然変異(de novo変異)であり、両親からの遺伝ではありません。変異のほとんどは精子形成の過程で発生すると考えられています。そのため、同じ家族内で複数の子どもが発症することは非常に稀です。ただし、母親が生殖細胞系列モザイクを持つ場合、再発リスクがわずかに上昇します。

アンジェルマン症候群の遺伝学

アンジェルマン症候群の発症メカニズムは複数あり、それぞれで遺伝形式が異なります:

  • 1. 母性15番染色体の欠失(約70%):
    15番染色体の15q11.2-15q13領域が母親由来の染色体で欠失しています。UBE3A遺伝子を含む約5-7Mbの領域が失われます。このタイプは最も頻度が高く、症状も比較的重い傾向があります。通常、新規の欠失であり、遺伝しません。
  • 2. UBE3A遺伝子の点変異(約11%):
    母親由来のUBE3A遺伝子に変異があります。母親が保因者の場合、子どもに50%の確率で遺伝します。父親が変異を持っていても子どもには症状は現れませんが、その子ども(孫)に遺伝する可能性があります。
  • 3. インプリンティング異常(約5%):
    15番染色体の刷り込み中心(imprinting center)に異常があり、母親由来のUBE3A遺伝子が正常に働きません。一部のケースでは遺伝する可能性があります。
  • 4. 父親性片親性ダイソミー(約3%):
    15番染色体を2本とも父親から受け継ぎ、母親由来の染色体が存在しません。通常、偶発的に起こり、遺伝しません。
  • 5. 原因不明(約10%):
    上記の検査で異常が見つからない場合。臨床症状に基づいて診断されます。

UBE3A遺伝子の機能:UBE3A遺伝子は、ユビキチンリガーゼE3Aと呼ばれる酵素をコードしています。この酵素は、細胞内で不要になったタンパク質に「ユビキチン」という目印を付け、分解されるようにする重要な役割を担っています。特に神経細胞において、シナプス(神経細胞同士の接続部)の可塑性(学習や記憶に重要な神経回路の変化)に必要なタンパク質恒常性の維持に関与しています。

その他の関連遺伝子

当検査パネルには、レット症候群やアンジェルマン症候群と類似した症状を呈する他の神経発達障害の原因遺伝子も含まれています。これにより、より包括的な診断が可能になります。

ミネルバクリニックのレット・アンジェルマン症候群遺伝子パネル検査の特徴

「レット・アンジェルマン症候群 NGSパネル検査」とは、現在レット症候群・アンジェルマン症候群およびこれらに類似した神経発達障害の原因として報告されている30の遺伝子に異常があるかどうかを、一度に調べられる検査方法です。

従来の検査方法の場合、複数の関連遺伝子を調べるために、A遺伝子の検査をして異常がなければ次にB遺伝子を検査する、というように何度も検査する必要がありました。もちろん、検査のたびに高額な料金がかかります。

何度も検査することでかかる費用や手間は、患者さんにとって大きな負担になります。ミネルバクリニックではそうした不便を解消するために、レット症候群・アンジェルマン症候群に関連する30遺伝子を一度に調べられる「レット・アンジェルマン症候群 NGSパネル検査」を採用しています。

一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページをご覧ください。

1.費用がリーズナブル

一般的な医療機関でレット症候群・アンジェルマン症候群の遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに数万円から数十万円の費用がかかることが多く、複数の遺伝子を調べる場合は非常に高額になります。

当院では、レット症候群・アンジェルマン症候群に関係するとされる30の遺伝子を一度に調べられる「レット・アンジェルマン症候群 NGSパネル検査」をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)

2.結果が出るまでがはやい

一般的な医療機関で行えるレット症候群・アンジェルマン症候群の遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。また、単一遺伝子の検査で異常が見つからなかった場合、追加の遺伝子検査が必要になることもあります。

当院で行う「レット・アンジェルマン症候群 NGSパネル検査」の場合、30の遺伝子を、2~3週間程度で一度に調べることが可能です。

3.一気にまとめてできる

臨床症状からレット症候群やアンジェルマン症候群を疑って単一遺伝子検査を行っても、病的変異が見つからないことがあります。また、他の遺伝子に変異があるかどうかまでは分かりません。

当院で行う「レット・アンジェルマン症候群 NGSパネル検査」ならば、臨床的に重要な30の原因遺伝子を同時に検査できるという利点があります。

オプション

塩基配列 (料金に含まれる)
欠失・挿入 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)

検査内容

「レット・アンジェルマン症候群 NGSパネル検査」では、レット症候群・アンジェルマン症候群に関係するとされる30種類の遺伝子(ARX、ATRX、CAV1、CDKL5、CNTNAP2、DYNC1H1、EHMT1、FOXG1、IQSEC2、KANSL1、MBD5、MECP2、MED17、MEF2C、NRXN1、NTNG1、OPHN1、PCDH19、ROGDI、SATB2、SCN8A、SHANK3、SLC2A1、SLC9A6、STXBP1、TCF4、TRAPPC9、UBE3A、WDR45、ZEB2)をまとめて検査します。

「レット・アンジェルマン症候群 NGSパネル検査」は、レット症候群・アンジェルマン症候群の遺伝的原因をお持ちの方を見つける可能性を高められると同時に、現在および将来的に活用できる情報を提供します。

どんな人が受けたらいいの?

【レット症候群・アンジェルマン症候群またはこれらに類似した症状の個人歴または家族歴のある方】に
「レット・アンジェルマン症候群 NGSパネル検査」を受けることをおすすめします。

この検査は以下のような方に適しています:

レット症候群を疑う場合:
・生後6~18ヶ月頃まで正常に発達した後、発達が停滞または退行した女児
・獲得した言語能力や手の機能が失われた方
・特徴的な手の常同運動(手をもむ、絞る、叩くなど)がある方
・頭囲発育不全(小頭症)がある方
・てんかん発作がある方
・歩行障害・失調性歩行がある方
・呼吸異常(覚醒時の過呼吸や無呼吸)がある方
・レット症候群の家族歴がある方

アンジェルマン症候群を疑う場合:
・重度の発達遅滞(特に言語発達の遅れ)がある方
・てんかん発作がある方
・失調性歩行・運動障害がある方
・容易に笑う、幸せそうな表情を頻繁に見せる方
・下顎突出など特徴的な顔貌がある方
・小頭症がある方
・睡眠障害がある方
・舌を突き出す癖がある方
・アンジェルマン症候群の家族歴がある方

その他:
・上記のいずれかの症状があるが、診断が確定していない方
・類似した神経発達障害の鑑別が必要な方
・将来子どもを持つことを考えている保因者の方で、リスク評価を希望される方

このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。

検査で得られる患者さんの潜在的利益は?

遺伝子検査により原因が判明すると、レット症候群・アンジェルマン症候群の診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。また、リスクが判明した場合には、適切なリハビリテーション、てんかん治療、生活習慣の改善、定期的なモニタリングを行うことができます。

遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・他の神経発達障害との鑑別
・適切なリハビリテーションプログラムの立案
・てんかん治療の最適化
・呼吸障害や心臓異常のリスク評価と管理
・脊柱側弯症などの合併症の早期発見
・栄養管理の最適化
・疾患の進行予測と長期的な管理計画の立案
・追加の関連症状のリスクの特定
・関連リソースやサポートへの患者の接続
・より個別化された治療と症状管理
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供

患者さんで病原性変異が同定された場合、遺伝形式に応じて家族の発症リスクが異なります。X連鎖遺伝の場合(レット症候群のMECP2変異など)、母親が保因者であれば、娘が発症するリスクは50%、息子が重症となるリスクは50%です。アンジェルマン症候群のUBE3A変異の場合、母親が保因者であれば子どもが発症するリスクは50%です。家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。

対象遺伝子

詳しくはこちら

ARX, ATRX, CAV1, CDKL5, CNTNAP2, DYNC1H1, EHMT1, FOXG1, IQSEC2, KANSL1, MBD5, MECP2, MED17, MEF2C, NRXN1, NTNG1, OPHN1, PCDH19, ROGDI, SATB2, SCN8A, SHANK3, SLC2A1, SLC9A6, STXBP1, TCF4, TRAPPC9, UBE3A, WDR45, ZEB2 ( 30遺伝子 )

各遺伝子の詳細:

・MECP2遺伝子:
メチルCpG結合タンパク質2をコードする遺伝子。典型的なレット症候群の約95%の原因となります。X染色体Xq28領域に位置し、DNAメチル化部位に結合して遺伝子発現を調節します。現在利用可能な技術(NGSおよびqPCR)では、MECP2遺伝子のエキソン1の単一エキソン欠失/重複の検出には対応していません。

・CDKL5遺伝子:
サイクリン依存性キナーゼ様5をコードする遺伝子。早期発症型で重度のてんかんを伴う非典型的なレット症候群(CDKL5欠損症)の原因となります。X染色体Xp22.13領域に位置します。

・FOXG1遺伝子:
フォークヘッドボックスG1転写因子をコードする遺伝子。先天性小頭症や脳梁異常を伴う非典型的なレット症候群の原因となります。14番染色体14q12領域に位置します。

・UBE3A遺伝子:
ユビキチンリガーゼE3Aをコードする遺伝子。アンジェルマン症候群の主要原因遺伝子です。15番染色体15q11.2領域に位置し、インプリンティング遺伝子として神経細胞では母親由来のコピーのみが発現します。タンパク質分解に関与し、シナプス可塑性に重要な役割を果たします。

・ARX遺伝子:
Aristaless関連ホメオボックスをコードする遺伝子。早期乳児てんかん性脳症、知的障害、脳の奇形などを引き起こします。X連鎖遺伝形式をとります。

・ATRX遺伝子:
ATRXクロマチンリモデラーをコードする遺伝子。ATRX症候群(重度の知的障害、発達遅滞、特徴的な顔貌)の原因となります。X連鎖遺伝形式をとります。

・CAV1遺伝子:
カベオリン1をコードする遺伝子。肺疾患や神経発達障害に関連します。

・CNTNAP2遺伝子:
コンタクチン関連タンパク質2をコードする遺伝子。自閉スペクトラム症、てんかん、言語障害などに関連します。

・DYNC1H1遺伝子:
ダイニン細胞質重鎖1をコードする遺伝子。運動ニューロン疾患、知的障害などを引き起こします。

・EHMT1遺伝子:
ユークロマティンヒストンメチルトランスフェラーゼ1をコードする遺伝子。Kleefstra症候群(知的障害、特徴的な顔貌)の原因となります。

・IQSEC2遺伝子:
IQモチーフとSecドメインを含むタンパク質2をコードする遺伝子。X連鎖性知的障害、てんかんなどを引き起こします。

・KANSL1遺伝子:
KAT8調節NSLコンプレックスサブユニット1をコードする遺伝子。Koolen-de Vries症候群(発達遅滞、知的障害、特徴的な顔貌)の原因となります。

・MBD5遺伝子:
メチルCpG結合ドメインタンパク質5をコードする遺伝子。2q23.1欠失症候群(知的障害、てんかん、自閉症様症状)に関連します。

・MED17遺伝子:
メディエーター複合体サブユニット17をコードする遺伝子。知的障害、脳症などを引き起こします。

・MEF2C遺伝子:
ミオサイト増強因子2Cをコードする遺伝子。MEF2C欠失症候群(重度の知的障害、てんかん、自閉症様症状)の原因となります。

・NRXN1遺伝子:
ニューレキシン1をコードする遺伝子。自閉スペクトラム症、統合失調症、知的障害などに関連します。シナプス形成と機能に重要です。

・NTNG1遺伝子:
ネトリンG1をコードする遺伝子。神経発達障害、知的障害などに関連します。

・OPHN1遺伝子:
オリゴフレニン1をコードする遺伝子。X連鎖性知的障害の原因となります。

・PCDH19遺伝子:
プロトカドヘリン19をコードする遺伝子。女性限定てんかんおよび知的障害症候群(EFMR)の原因となります。X連鎖遺伝ですが、主に女性が発症します。

・ROGDI遺伝子:
ROGDIホモログをコードする遺伝子。Kohlschütter-Tönz症候群(てんかん、知的障害、エナメル質形成不全)の原因となります。

・SATB2遺伝子:
SATB相同ボックス2をコードする遺伝子。SATB2関連症候群(重度の言語障害、知的障害、特徴的な顔貌)の原因となります。

・SCN8A遺伝子:
電位依存性ナトリウムチャネルαサブユニット8をコードする遺伝子。早期乳児てんかん性脳症、知的障害などを引き起こします。

・SHANK3遺伝子:
SHアンカリングおよびアンキリン反復ドメイン含有タンパク質3をコードする遺伝子。Phelan-McDermid症候群(重度の言語障害、知的障害、自閉症様症状)の原因となります。

・SLC2A1遺伝子:
グルコーストランスポーター1をコードする遺伝子。GLUT1欠損症候群(てんかん、発達遅滞、運動障害)の原因となります。

・SLC9A6遺伝子:
ナトリウム/水素交換体6をコードする遺伝子。X連鎖性知的障害、自閉症様症状、てんかんなどを引き起こします。

・STXBP1遺伝子:
シンタキシン結合タンパク質1をコードする遺伝子。早期乳児てんかん性脳症、知的障害などを引き起こします。シナプス小胞の神経伝達物質放出に関与します。

・TCF4遺伝子:
転写因子4をコードする遺伝子。Pitt-Hopkins症候群(重度の知的障害、特徴的な顔貌、てんかん)の原因となります。

・TRAPPC9遺伝子:
輸送タンパク質粒子複合体サブユニット9をコードする遺伝子。常染色体劣性知的障害、小頭症などを引き起こします。

・WDR45遺伝子:
WD反復ドメイン45をコードする遺伝子。BPAN(beta-propeller protein-associated neurodegeneration:脳内鉄蓄積を伴う神経変性疾患)の原因となります。X連鎖遺伝形式をとります。

・ZEB2遺伝子:
亜鉛フィンガーEボックス結合ホメオボックス2をコードする遺伝子。Mowat-Wilson症候群(重度の知的障害、てんかん、特徴的な顔貌、ヒルシュスプルング病)の原因となります。

カバレッジ

カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。

≥99% at 20x(読み取り深度20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。

検体

血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)

※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能です。
 ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
 血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
 オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
 検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。

検査の限界

詳しくはこちら

すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。

低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。注文された場合、欠失/重複分析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。

この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位、反復伸長(例:三塩基またはヘキサ塩基)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。

MECP2遺伝子に関する特記事項:現在利用可能な技術(NGSおよびqPCR)では、MECP2遺伝子のエキソン1の単一エキソン欠失/重複の検出には対応していません。

※この検査パネルでは、30の原因遺伝子のみを対象としています。レット症候群の約5~10%、アンジェルマン症候群の約10%では、既知の遺伝子に変異が見つかりません。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。

結果が出るまでの期間

2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。

料金

税込み275,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)

よくあるご質問

どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
レット症候群を疑う場合は、生後6~18ヶ月頃まで正常に発達した後に発達が停滞または退行し、特徴的な手の常同運動が見られる女児におすすめします。アンジェルマン症候群を疑う場合は、重度の発達遅滞(特に言語発達の遅れ)、容易に笑う、失調性歩行、てんかん発作などがある方におすすめします。また、家族に同様の症状がある場合も検査をご検討ください。
検査はどのように行いますか?
血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
レット症候群とアンジェルマン症候群の違いは何ですか?
レット症候群は主に女児に発症し、X染色体上のMECP2遺伝子の変異が原因で、生後6~18ヶ月頃から発達が退行し、特徴的な手の常同運動が見られます。アンジェルマン症候群は男女ともに発症し、15番染色体上のUBE3A遺伝子の母親由来のコピーが機能しないことが原因で、容易に笑う、失調性歩行、重度の言語障害が特徴です。両疾患とも重度の発達遅滞とてんかんを伴うため、当検査により正確な診断が可能になります。
家族も検査を受ける必要がありますか?
遺伝形式によって家族の発症リスクが異なります。レット症候群のMECP2変異の場合、約95%以上は新規突然変異であり、同じ家族内で複数の子どもが発症することは非常に稀です。ただし、母親が生殖細胞系列モザイクを持つ場合、再発リスクがわずかに上昇します。アンジェルマン症候群のUBE3A変異の場合、母親が保因者であれば子どもに50%の確率で遺伝します。ご家族の検査により、将来の家族計画に重要な情報を提供できます。
検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
レット症候群の約5~10%、アンジェルマン症候群の約10%では、既知の遺伝子に変異が見つかりません。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。臨床症状に基づいた診断と管理が引き続き重要です。
保険は適用されますか?
当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み275,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。
結果はどのように説明されますか?
検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、今後の対応、ご家族への影響、治療・管理選択肢などについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。
子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
遺伝形式によって子どもへの影響が異なります。レット症候群のMECP2変異はほとんどが新規突然変異のため、次の妊娠での再発リスクは低いですが、母親が生殖細胞系列モザイクの場合はリスクがわずかに上昇します。アンジェルマン症候群のUBE3A変異の場合、母親が保因者であれば子どもが発症する確率は50%です。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。
レット症候群・アンジェルマン症候群の治療はどのように行われますか?
現在のところ根本的な治療法はありませんが、対症療法により症状を管理します。てんかん発作に対する抗てんかん薬、理学療法・作業療法・言語療法などのリハビリテーション、栄養管理、呼吸管理、脊柱側弯症の治療などが行われます。レット症候群に対してはトロフィネチド(trofinetide)という新薬が一部の国で承認されています。適切な管理により、多くの患者さんは日常生活の質を維持できます。
予後はどうですか?
レット症候群の場合、適切な管理により多くの患者さんは成人期まで生存できます。平均寿命は約40歳以上とされていますが、個人差が大きいです。突然死のリスクがあり、心臓や自律神経系の異常が原因と考えられています。アンジェルマン症候群の場合、生命予後は比較的良好で、平均寿命は一般の方とほぼ同じです。誤嚥性肺炎や転倒による事故などのリスクに注意が必要です。
他の医療機関での検査との違いは何ですか?
当院では臨床的に重要な30の原因遺伝子を一度に検査でき、従来の単一遺伝子検査と比べて費用・時間を短縮できます。また、臨床遺伝専門医が常駐しており、すべての患者さんに対して専門医が必ず診療と遺伝カウンセリングを行います。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも専門的な診療を受けることが可能です。


プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。

仲田洋美のプロフィールはこちら